サイトの全体構造   本乃枝折(検索リンク) 群馬県・郷土出版案内・リンク集  管理人のブログ Hoshino Parsons Project 


かみつけの国 本のテーマ館
 第三テーマ館
日航123便御巣鷹山墜落事故

「いのち」のゆくえ、「責任」のゆくえ

(2008/08/11更新)


               写真はイメージ映像で事故機とは関係ありません


 JAL123便の御巣鷹山墜落事故は、何年経ても、わたしたちの記憶から消えることなく残っています。
 とりわけ群馬県は、その墜落現場となってしまったこともあり、事故後の遺体処理をはじめ、多くのひとびとが事故そ
のものと深くかかわることにもなりました。そして、その誰もが忘れることのできない体験をし、その後の人生観すら変
わることになってしまった人も少なくありません。

 にもかかわらず、事故処理と遺族への対応の問題、その後、空の安全性は改善され信頼されるに足りるといえるよう
な時代になったのかということに関してみるならば、あれだけの事故の教訓が今日ほんとうに活かされているのかどう
か疑問を感じずにはいられません。



20年経った今・・・・・。
事故原因の解明に終止符が打たれてしまった事故。
520人もの死者を出したのに、誰も責任を問われなかった事故。
救難救助活動の空白時間への疑問が解けない事故。
遺族は納得していません。
歴史の中で、真実が明らかになる日が来ることを願います。

                            (『茜雲 総集編』あとがきより)



この第4テーマ館の構成

御巣鷹の尾根 「いのち」のゆくえ
「墜落遺体」の衝撃
日航機事故「真実のゆくえ」関連書
「真実」のゆくえ、そして空は安全になったのか?
責任のゆくえ
御巣鷹山慰霊登山

        
        「他人の死」を語ることの難しさ  

「上野村」が教えてくれること   上州の御巣鷹山について


黒沢丈夫(くろさわたけお)   飯塚訓(いいづかさとし)   小倉寛太郎

飛行神社と二宮忠八のこと







(現在このパネルのコーナーは店内にはありません)


          期待以上だった映画「クライマーズ・ハイ」 


 最近の話題の邦画を観ると、その脚本力や映像技術にがっかりさせられることがとても多い。
とりわけ派手な宣伝をしている作品ほどその傾向は強い。

今回の「クライマーズ・ハイ」も、原作の素晴らしさ、テレビドラマ化された作品の出来の良さなどか
らして、かなりの能力がないとこの横山秀夫作品を観るものの納得のいくかたちで映像化すること
は難しいのではないかと、半ば疑いの眼すらもって今回の封切を私は待っていました。

ところが、実際に観てみての印象は、想像していた以上に細部にわたりしっかりとしたつくりの映画
で、原田眞人監督作品を観るのは初めてでしたが、失礼ながら、これほどの力のある監督であると
は知りませんでした。
同監督の「あさま山荘事件」を高崎で上映していましたが、そちらも是非観てみたくなりました。


この作品を観て第一に感じたのは、とてもよく出来たテレビドラマ作品と比べて、やはり映画ならで
はの映像がきちんと出来ていることです。

そのひとつは、谷川岳の登攀シーンです。
 山岳映画でクライミングシーンを取り扱ったものは多いのですが、なかなかその岩壁などのスケ
ールを実写でうまく表現できた作品はないものです。
 最近ではCG技術を駆使すれば、簡単に人物のアップからカメラがぐんぐん引いていき、果ては地
球の外にまで広がっていくことも普通の表現になってしまっていますが、垂直の岩壁の迫力をとら
えた画面を見せることは意外と難しいものです。

タイトルの記憶がないのですが、キルギス共和国の映画で、村の掟を破って鹿を狩ってしまったあ
る青年が、ボス風の鹿を追って岩場をどんどん登りつめ、あるところで身動きできなくなる。その岩
壁に這いつくばった姿を少しずつカメラが引いてく。すると数百メートルの岸壁の中央にへばりつい
た青年の姿が見えてくる。
その映像に出合ったときの感動に近い迫力が感じられました。

日航機の墜落現場シーンも、むやみに惨たらしい遺体を写すようなことはなく、急斜面の混乱した
現場のリアリティはうまく表現されていたように見えました。


第二には、横山秀夫作品の人物描写の特徴でもあるのですが、一見、嫌な人間であっても、その
人の背景や職務上のおかれた立場などから、そうせざるをえない状況が必ず描かれていることが、
テレビドラマ以上によく出来ていました。

新聞社内のドロドロした各部局間の葛藤が、単なる対立以上に、新聞社を支えている者として、そ
れぞれの立場でそうすることしか出来ない姿が上手く描ききれていました。
おかげで数々の喧嘩対立する場面が、意外と爽やかな印象さえ残り、後味の悪さを感じさせない
演出になっていることにも関心させられました。

この描き方であれば、モデルとなっている上毛新聞社も、必ずしも悪い意味ではなく、新聞社共通
の現場の葛藤として好意的に観ることができるかと思えます。


第三には、「クライマーズ・ハイ」というタイトルテーマが、ドラスティックな事実の迫力に引きずり込
まれる新聞社の秒を争う現実のなかで、判断に迷いながらもダブルチェックに徹する姿勢と、現場
のリアリティを重視しながらも、必ずしも凄惨な現実を見せることが報道ではないという現場の対立
をしっかりとらえていることで、もしかしたら原作以上にその主題は生きいきと描かれていたといえ
るかもしれない印象を受けました。

この点が浮き彫りになると、この作品を通じて、日航機事故と一新聞社の関係だけではなく、多く
の人々がこの史上例のない巨大事故の結果とどう向き合うのかという課題にも、とても大事な視点
をなげかける価値ある作品であることが見えてきます。


それそれの場面のやりとりの小道具類も実によく出来ていると思ったのですが、残念ながら、それ
らがよく注視して見ていないと、早いテンポの展開で聞き取れなかったり、見極められなかったりし
がちで、ディテールのこだわりが不特定の人へのわかりやすさにまでは至っていないのが惜しく感
じられました。

それでも、私はここまでの作品に仕上げてくれた原田眞人監督には、拍手喝采を送りたい。
ひとそれぞれ見方はいろいろあると思いますが、それぞれの職務で全力でぶつかりあう人々、誰も
が経験のない混乱のなかで、人が何に重きをおいてどうするべきなのか、私が日航機事故を通じ
て学んだ大事なことをこの映画はしっかりと訴えてくれているようでとても嬉しい。

夜11時すぎからの上映で終了は2時になるにもかかわらず、私の最近行った映画のなかでは最も
多く人が入っていました。

どうか一人でも多くのひとに見てもらいたい映画です
 


                ブログ「正林堂店長の雑記帳」2008/7/7より転載



あれから、20年 (2005年夏に思う)

 そして、とうとうあの事故から20年という歳月が流れました。

 そんな節目にあたる年に様々なニュースが飛び込んできます。

 日航では相次ぐ事故を引き起こし、国土交通省から航空法にもとづく事業改善命令をうけています。
 はたしてトップはこの年をどううけとめているのでしょうか。

 日航というひとつの大きな組織のなかでは、いまも御巣鷹山に登り続ける日航社員の姿もありますが、遺族や周辺の
私たちにとって、乱立する組合の問題も含め、やはりひとつの組織とはとても思えない状況が今も続いています。


 また、これまで日航123便墜落事故にかかわってきたすべての人びとの間で大きな役割を担ってきたで上野村の黒
沢村長(黒沢丈夫(くろさわたけお)は、すでに引退されました。
 

 そんな様々な記事が飛び込んでくるなかで、一際次の記事がわたしの目を引きました。



 日航機墜落事故:
  山守、脳梗塞で倒れる 遺族ら回復祈る
     事故現場の御巣鷹山に登る仲沢勝美さん (毎日新聞 2005年6月27日)

 犠牲者520人を出した85年の日航ジャンボ機墜落事故現場の群馬県上野村で、御巣鷹の尾根の管理を続けてきた仲沢勝美さん(85)が昨年
末に脳こうそくで倒れ、寝たきりになっているとの記事が新聞に出ていました。上野村の黒澤村長から、登山道の修復、整備役を任され、遺族とと
もに標高約1200メートルの山に何度も足を運んでいる方です。

 仲沢さんは、登山道に手すりを作り、小川に橋をかけ、草むしりや道の舗装を続けた。高齢の遺族を背負って登ったり、登山できない遺族に代わ
って墓標に花を手向けたりもし、毎月12日の月命日を含め、登山回数は月平均4〜5回。この19年間に遺族と交わした手紙は1000通以上にな
ると新聞記事は伝えています。
 最近自宅で倒れて以来、体の自由はほとんど利かず、隣町の特別養護老人ホームで介護を受けていたとのこと。
 村は後継者を探しているが、引き受け手はまだいないそうです。



 残念ながら仲沢さんは、もう亡くなられて、今は黒沢さんがその志を受け継いで、登山道の修復・整備や遺族の世話
をされています。
 


 「楢勝」こと仲沢さんのことは、私は池田知加恵さんの『雪解けの尾根』を通じて知りました。  仲沢さんは、まさに加害者でも被害者でもない
立場でありながら、この事故を通じて仲沢さん自身の人生が変わり、仲沢さんの存在によって、多くの遺族の心が和らぎ、また日航側の人びとも
変わってきたといえる存在です


 律儀な楢勝は、閉山中の真冬でも月命日の十二日には、必ず御巣鷹の尾根に登ってくれている。この原稿を書いて
いるところにも彼から電話がかかってきた。彼は、電話魔でもある。

「今、山に登ってきたところだがね、昇魂のあたりは、1メートルも雪が積もってたべ。池田さんとこの墓まで行けなくてご
めんな。雪が解けたら、早くおいでよね」と。

 この冬は、きびしい寒さだったため、御巣鷹の雪解けは、遅れそうだとか。春の陽ざしを受けて、墓標に積もった雪が
きらきら輝きながら、解ける様が目に浮かぶ。

 私は、今年も楢勝の補修してきた登山道を登る。

 目を細めて再会を喜ぶ彼の笑顔に会うのが待ち遠しい。

                                池田知加恵『雪解けの尾根』より

 





 このホームページのいくつかのテーマのなかでも、いち早く、遠く長野県や神奈川県からこのサイトをみたという方がわざわざお店にきてくれたの
もこのテーマ館です。
 しかし、残念ながら、このテーマ館のなかで、なんでいまごろ日航機事故なんだという疑問を寄せられ、店内のコーナーを一番先に縮小してしま
ったのも、このテーマ館です。

 長野県、神奈川県、静岡県などからわざわざこのテーマ館を見にいらしてくれた方がこのコーナーの本をまとめ買いしてくださいましたが、店内の
コーナーを縮小してしまっていたことが悔やまれます。

 未だに日航機事故をめぐるサイトはたくさんあり、掲示板などをもつサイトも、膨大な書き込みがされていますが、お店でただ関連書を集め、二、
三の説明文を添えて展示しただけでは、この問題の今日に受け継がれるべき価値はなかなか伝えられないことを痛感しました。
 それだけにこうしたバーチャルサイト上でこそ、長くこの問題の意味を訴え続けていきたいとも思います。


 はるばる遠くから来ていただきながら、いつもこれといったお礼がなにもできないのもなさけないのですが、ようやくひとつだけ、ささいなお礼の品
が思い浮かびましたので、今度、遠くからお店にいらした方は是非、店長までひと声おかけください。たとえ店にいないときでも、可能な限りすっ飛
んでまいります。






  本乃枝折 (新刊・古書など様々な検索に便利)


戻る
戻る


サイトの全体構造   

inserted by FC2 system