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自然と社会の再生産の基礎単位としての家族

(まだ執筆中です)


地球環境や経済問題を語る上でよく「持続的発展可能な社会」といった表現が使われますが、
私は以前からこの表現には違和感を感じていました。
それは、この言葉の「発展」を前提としたようなニュアンスが、
果たして人類の進歩と同一レベルに考えてよいものだろうか?
といった疑問によるものです。

今、地球全体で問われているのは、むしろ
いかに環境に対する負荷を押さえて持続的な経済発展をはかるかということよりも、
自然と社会の再生産の構造そのものが破壊されている現状を
いかに本来の姿に復元させるか、
といった視点のほうがはるかに重要なのではないかと思います。

そのうえで、より大事な視点が
自然と社会の生命の再生産の基礎単位としての「家族」の問題です。

私の関わっているNPOなどにおいても、地域との関わり方を考えるうえで、
「家族」というキーワードは、とても重要な役割をもっています。
ところが、このキーワードを親子や夫婦などの「家族愛」以外の内容で語ることは、
とても難しい作業で、以前からこのページをつくることは考えていたものの
まとめあげる自信がもてず、長い間放置したままになっていました。

しかし、最近になってようやく私のブログなどで、
この問題に関連した内容を書く機会が重なり、
少しずつかたちが出来てきたので、断片のツギハギではありますが、
まずは公開して作業を開始してみたいと思います。



 
1、 高度な資本主義が発達した現代においても 、
    世界中の生産活動の基本的形態は、
    いまだに圧倒的多数が家族労働である。

   アジアに限らず、ヨーロッパの経営形態を見ても、 
      家族・血縁による経営形態はいまだに根強いものがある。 
      人口構成比からみれば、世界の圧倒的多数が「家族労働」と「個人事業」です。 
巨大組織化した企業でも、その実態の多くは
膨大な下請け中小零細企業(個人事業・家族労働を含む)で成り立っています。

この巨大化した企業の姿が、家族・血縁にこだわらない組織形態で発展したのは 、
     アメリカと日本のみが突出しているといえます。 
      日本も血縁にこだわりますがが、
「養子」という血縁を越えた組織が可能な希な国でもあります。 
   
 
フランシス・フクヤマ
『「信」なくば立たず』
三笠書房(1996/04) 定価 本体2,429円+税 品切れ

いまや最先端産業においても、
時代のベクトルは「より小さく」の時代へ移ってきています。
今はその過渡期で、「一極集中の巨大化」と「分散化」の時代。



 
2、 これまでは企業に代表される大規規模生産こそが、
   生産力発展の最大条件とみらえれ、
   地域環境を支えていた個人事業、家族労働が
   限りなく企業に吸収されてきた歴史がある。

   ・初めに農業労働     →   都会の工業労働者へ 
   ・地元の自営商業労働者 → 大型SCやスーパーマーケット、 
                      チェーン店などの労働者(パート)へ 

  実際にこのことによって見かけの生産性は 、飛躍的に増大してきた。 

関連ページ
ようやく見えてきた次の社会
  

 
3、自然と社会の再生産を前提としたが、 膨大な量の
無償の労働(自然からの贈与、人間による贈与)によって社
会が成り立っていることを忘れて、 一次的な利益に
つながらないそうした労働をすべて切り捨て、疲弊した
自然、地域社会や企業風土、家庭をつくってきてしまった。

   ・ 生産の基本部分(基礎資源)は大自然からの贈与によるもの 
      この贈与に対して企業は代金を払っていない 
    (略奪と破壊の繰り返しで、再生産の構造維持の費用負担をしてない) 
電気・水道などの料金はもとより、化石燃料などの消費は、
大自然に対してその費用は払っていない。

   これまで人類は、大自然の恩恵に対する尊敬、 
  崇拝の念をもってその維持・再生産につとめてきた 


私の関連ブログ

「贈与」ということ その1
贈与 その2  贈与 その3  贈与 その4


この大自然の再生産のために人類がながく行ってきた
「無償の労働」の意義や価値を見失うことが、
使い捨ての消費社会と、
会社から帰ったら役に立たない多くの父親の姿を生んでいるともいえる。
会社の利益追求以外のたくさんの仕事が地域・自然社会を支えている。


 
4、 安易な企業誘致や産業の育成よりも 、昔からその 
   地に暮している人々による生業(なりわい) の復興支
   援の方が「強い地域経済」を育てることにつながる。
   (大企業依存の地域経済が、いかに脆いものであるかは立証された)

  個人事業・家族労働の生業(なりわい)は、 
もともと地域の再生産のために必要なことを 不可分の業務として持っていた。 
   (国や行政にまかせることではなく、 自分たちのものとして必要とする作業) 

  企業誘致やベンチャー育成よりも、 
   既存事業の復興、イノベーションの方が 
   決して簡単ではないが、はるかに容易い。 

    既存事業の復興の能力がないまま、新規事業に手を出しても成功しない。 
「どこになら参加できるか」の雇用対策から、
「なにができるか」の雇用事業への転換


 
加藤敏晴 著
『創業力の条件 チャンスに満ちたマイクロビジネスの時代へ』
ダイヤモンド社(1999/11)  定価 本体1,900円+税


 
5、 家族労働、個人事業を中心にした経済構造のほう  
  が、ワークシェアリングや地域福祉、高齢者の健康維 
  持と生きがいのためにも効果が大きい。
 

   ひとりの年収300万円、500万円で家庭を支える労働ではなく、 
  子どもからお祖父さんまでが、出来ることで支えあう構造の意義。 
  福祉予算を増額することよりも、実際のメリットが多い。 

   生涯、自分が他人が喜んでくれることで、何をしてあげることができるのか 
  持ち続けることが、生きがいになる。 (組織にうもれた肩書き人間が失ったもの) 

関連ページ
高齢者率、独居老人率日本一の元気な島『大往生の島』




 6、 単一労働の組み合わせによる分業化を推進する企
   業社会に対して、ひとりひとりが自分の作業を管理し
   て、「総合的」に活きていける姿は、人間の一生を見
   渡したうえでも限りなく価値がある。
 

  「製品開発」、「製造」、「営業」、「販売」、 「経理」は、個人事業において
特別な意識を持つことなく 、一つの必要な一連の行程として行なっている。
ここに本来の人間の営みの巣が姿がある。

関連ページ
仕事は楽しいかね




 7、利害で結ばれた組織形態である企業にくらべて、
  地域コミュニティーや家族といった結びつきの関係は、
  たとえ条件の悪いことが多少あっても、「あきらめない」
  強さがあり、それが長い人間社会の歴史を築いてきた
  ともいえる。

企業や団体などの組織 : 特定の利害で結びついた集団。
                 目的達成のための一定の資質や能力を要求する。
家族や地域 : 構成員の能力や資質にかかわりなく、
          与えられた条件を天賦のものとして受け入れ、
          多くの場合、「あきらめることのない」関係を築きながら問題を解決していく。




この分野では、作家、山本一力さんが
誰よりもゆたかな家族像を描いてくれているように思います。

    




 「家族愛」や「文化」、「宗教」などの精神活動も、この点から見ると、
    純粋なイデオロギー上の問題ではなく、
地球と人類の再生産を維持するための生産活動の
大事な一要素であることに気づく。
 

   




新しい通貨観、経済観 参考文献ガイド
起業力・創業力(イノベーション)の時代
アワニー原則、サスティナブル・コミュニティのこと


テーマ館内の関連ページ
質(価値)は量によってしか表現しえないのだろうか
ようやく見えてきた次の社会
仕事は楽しいかね


私のブログ内の関連記述

好きなまちで仕事を創る 遠く感じる「自治」意識
山の民の高速道路  大疾歩(おおのり)  草の者の道  
赤谷プロジェクト 日本人はどのように森をつくってきたのか
 告発だけの時代は終わった その土地固有種の強さ
社会生産の基礎単位としての「家族力」
情報の値段は本来タダ(無料)
やっぱり払われていない価値
之を語りて平地人を戦慄せしめよ
「贈与」ということ その1
贈与 その2  贈与 その3  贈与 その4


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