第一テーマ館 根源から「お金」を問う エンデの遺言
かつてこの地域通貨のことをはじめて知ったときは、こんな考え方が世の中にほんとうに普及していいたら素晴らし
いんだけどななんて半分夢物語程度に思っていましたが、驚くことに、世界中ですでに2500以上の地域通貨が住民 によって生み出されているとのことです。
また群大と前橋市の間でも試行がされています。
地域通貨(エコマネー)とは
「地域通貨とは、限定された地域でしか使えない通貨であり、法律で定められた国家通貨である円やドル、ユーロ
等に対する言葉です。他にも補完通貨とか自主通貨、自由通貨、会員制通貨、コミュニティー通貨、グリーンドル、エコ マネー、オリジナルマネーなどと呼ばれています。(「だれでもわかる地域通貨」森野栄一監修、北斗出版 36ページよ り)
地域通貨のもうひとつの特徴は、利子のつかないお金ということです。
一部、利子がつかないだけではなく時間とともに「減価(価値が下がる)」する地域通貨もありますが、現在普及している
大半は、持っていても利子がつかない、つまり蓄財価値はあまりないこのタイプのものです。(もっとも、利子がつかな いというだけでは、現在の銀行預金もほとんど同じになってしまっていますが。)
地域通貨でなにが変わるのか
よく、地域通貨を、なにか便利な通貨としてばかりとらえられる傾向がありますが、地域通 貨でもっとも重要なの
は、国の通貨に頼らない人と人との関係をきずくことにあります。
この仕事、この用事、この品物をどうしようか、誰にたのももうか、誰に使ってもらおうか、
等などの日常の様々なことがらが、自分の今住んでいる地域内で済ませられることであれば、
あの人に頼めばできる、私ならこれがしてあげられる、といったような地域の関係をたくさん築いていくことにこそ地域
通貨の核心部分があるのだと思います。
これは、出だしは一見大変な作業をともないますが、この流れをつくることができれば、地域のコミュニケーション自
体をとても生きた関係にすることができます。
地域通貨を運用し成功するには、地域コミュニティー作りの基本構想をはっきりさせ、しっかりした運営管理者
の存在が不可欠。
地域通貨は、決してそれを導入しさえすれば何かが変わるといったような自動装置ではありません。無人格な従来
の貨幣と異なって、抽象的な量でのみ交換の仲立ちをするのではなく、常に具体的な労働やものの価値を対応させる ところに大事な特徴があります。
したがって、地域通貨の管理者は、お金の流通管理業務だけではなく、どこそこに住んでいる誰それさんのあの能力
を欲しがっているひとが、どこそこにいるといった、具体的な人と人との仲介がなによりも大切な仕事になります。
安易に自治体主導で、街づくりの一方策としてブームにのって導入して成功できるようなものではありません。しっか
りと、どうのようなコミュニティーを築き上げるのかイメージをもって取り組むことが重要です。
地域通貨は現行通貨のグローバルな機能と共存、分業が必要。
地域通貨は現行通貨に単純にとって代わるようなものではありません。現行通貨も様々な問題はあるものの、信用
や付加価値、期待値を「利子」という方法で表現すること自体、すべて間違っているわけではありません。ただ、グロー バル化一本やりの世の中が非常に脆弱な経済構造になってしまっていることは確かで、「剥き出しの資本主義」といわ れる社会のなかでも、より多くの人々がもっと豊かに、自由に暮らせる社会を築くために役立つシステムであるといえま す。
しかし、世界各地での経験から、以下のことにも同時に気づき始めました
れる社会現象とさえなっています。大学での卒業論文のテーマにもなり、各自治体からは国内外の実践現場への視察 が相次ぎ、一部大企業も熱い関心を寄せています。しかし、そのようなムーヴメントには少し危なっかしいところもある ように感じていました。地域通貨は、地域振興の切り札であるとか、コミュニティーを創造するシステムだとか、そんなう まい話ではないのです。地域通貨がもっている可能性はシステムからくるのではなく、個人にあると考えていま す。
地域通貨は、参加する人の問題意識や理想、思惑をそのまま映し出します。硬直化した組織がなかなか改革されない
日本では、個人の夢を自由に乗せられる社会システムがあまりないことも事実です。何しろ「お金」を市民が発行できる という発想の大転換がそこにあるのですから。」 (坂本龍一+河邑厚徳『エンデの警鐘』NHK出版あと がきより)
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