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上州の古道・諸街道
(2013/0721更新)





「時の記憶、時をへだてた想起の道は、目に見えない道、耳に聞こえぬ道である。
この道が見えず聞こえぬものに、事の隠れた道はたどれぬ。」

山田宗睦 著 「道の思想史 上」より
 



 街道という言葉を使ってしまうと、つい中仙道や三国街道などの江戸時代に整備された主要道を思い浮かべますが、
古代から人とモノの行きかうところにはどこでも、物理的に踏み固められた道にとどまることなく、なんらかの名前のつ
いた道があったといえます。
 その道は、現代の乱開発による歴史遺産の破壊を嘆くまでもなく、歴史をたどり、先人の足跡をたどる積極的な目を
もってしなければ見分けることのできないものですが、逆にそうした目をもってすれば、身近ないたるところにその痕跡
を見出すこともできます。

私のブログ内関連記述

山の民の高速道路  大疾歩(おおのり)
草の者の道



 そうした身近に潜んでいる歴史に対する目を、
以下に紹介する本は私たちに開かせてくれます。




山内種俊 著  『上州の旧街道いま・昔』 
発行者 山内種俊(1985/06) 定価 2,000円
(群馬県内主要図書館にて閲覧可能)

 本書は宇都宮で自費出版のようなかたちで出された本のようで、図書館や関係者配布分以外の一般の目に触れるような機会はあまりなかった
ようです。
 はじめは毎日新聞の群馬版に広告企画として連載されたものを、著者が栃木県に移ってから本にまとめられたもののようです。県立・市立の主
要図書館にはあると思います。
 本書との出会いが、このページを作成するきっかけをつくってくれたともいえます。


 

地方史研究会協議会 編
『交流の地域史 群馬の山・川・道』 
雄山閣(2005/10) 定価 本体6,000円+税

 

煥乎堂・企画室 編
『目で見る上州の道』 
煥乎堂(1983/10) 定価 本体11,000円 絶版

           
   木下 良 監修  武部健一 著           
『完全踏査 古代の道 畿内・東海道・東山道・北陸道』    
   吉川弘文館(2004/10) 定価 本体2,600円+税             




藤森栄一 著 『古道』
学生社(1966/09) 絶版  講談社学術文庫(1999/05) 定価 本体1,000円+税








 高桑信一 『古道巡礼』
東京新聞社(2005/01) 定価 本体2,000円+税


これぞフィールドワークの決定版。著者の取材力、文章力ともに一段と磨きがかかってきた。
沢登、渓流釣りの実力者が、歴史に埋もれた古道を訪ねて山深く分け入り、密度の濃い一冊に仕上がりました。
雑誌「岳人」連載時から単行本化が待たれていた待望の本です。
歴史学者などの専門家の研究よりも実質的な中身あふれた本

 1、八十里越−会津と越後を結んだ歴史の街道  2、津軽白神 3、仙北街道−古代東北の謎を秘めた千年の道  4、越後下田の砥石街道
−信仰と産業が交錯した山岳世界  5、足尾根利山の索道−首都圏の水瓶に残された文明の残骸  7、会津中街道−白湯信仰の陰に隠れ
た不運な峠道 8、黒部川、日電歩道  9、松次郎ゼンマイ道  10、北海道、増毛山道  11、米沢街道、大峠  12、熊野古道、小辺路  
13、鈴鹿、千草越え
14、八十里越の裏街道−古道の織りなす原郷の風景


「あのころは良がったな。径なんてもんは、人が来れば黙ってでも譲り合ったんだし、ついでに世間話のひとつも出たも
んだ。相手が牛でも馬でもたいした違いはねえが、車が通る道になった途端におかしくなってしまった。車が来ればこっ
ちは文句なしにどかねばなんねえし、それで挨拶があるわけでもねえ。なんかおかしいべ。人が通るための径が、いつ
の間にか車のための道になってるわげだがらな」
 
 八十里越で著者が出会ったこの親父のなにげない言葉は、今、とても大事な意味を持っています。



いま山村では新しい林道が次々に開削されている。
しかし、山村に行ってみると新道の開削より廃道になった街道のほうが多い。
                        内山節『山里の釣りから』より





宮本常一 著 『塩の道』
講談社学術文庫(1985/03) 定価 本体800円+税





 松田壽男 著 『古代の朱』
ちくま学芸文庫(2005/01) 定価 本体1,000円+税


 歴史をつくった道はまず、食料、農産物などの輸送の前に、金、銀、銅、鉄などの資源の探索と輸送の道でした。
 そうしたことは知られていながら、古代において水銀のはたした役割についてはあまり注目されていませんでした。
 本書では墨が普及する以前から朱による色付けが一般的に行なわれていたことや、ミイラ保存や化粧などのために利用されていた水銀の価値
に注目して、著者は全国の産地や地名をたどる。
 なかでも古代の朱砂の産地としてこと、紀伊半島とともに群馬が突出した地域であったことも興味深い。
 歴史の道を考える新しい視点を与えてくれる好著です。


 

山田宗睦 著 『道の思想史 上・下』
講談社(1975) 絶版

 これぞ名著、お宝本と言わずしてなんと呼ぶ。図書館でもあまりお目にかかれないのが惜しい。
 目次をひろっただけでも、十分その奥の深さがうかがい知れると思われるので、以下に記します。
  上巻 T 神話  
        1、隠し道 2、神々の道 3、衣通の道 4、挽歌の道 5、猿の道 6、黄泉の道 7、遊女の道
        8、海上の道 9、水行陸行 10、くぐつの道 11、道の神の道 12、道
      U 伝説
        1、義経伝説 2、盲人の道 3、橋の思想 4、海道の文芸 5、遊行の道 6、修験の道 7、海賊の        唄 8、静伝説 
9、蝦夷の道 10、忍びの道 11、道ノ者 12、阿国伝説
  下巻 V 紀行
        1、謡坂 2、妻籠 3、殿 4、王滝 5、奈良井 6、洗馬 7、諏訪 8、美篤 9、鹿塩 10、新野
        11、設楽 12、佐鳴湖
      W 意識
        1、書簡 2、日記 3、講演 4、論文 5、編集 6、旅 7、文体 8、詩その一 9、詩その二
        10、映像その一 11、映像その二 12、時

 山田宗睦は、他にも『日本の「道」』 講談社1972)など、「道」を求道の広い意味でとらえた歴史解説書を出しているのですが、どれも古書でな
いと手に入らないのが残念。
 講談社さん、学術文庫に入れてください!



八木原の道しるべ



天保四年(1833)建立の三角錐の安山岩の自然石で、
遠く著名な社寺への里程も詳しく刻まれている。
渋川市指定史跡。

       「右高崎江四里・左江戸江三十里」
       その下に
「京都 百十一里半
大阪 百二十四里半
伊勢神宮 百十里」
       そして海の向こう四国の「讃州金毘羅 百七十五里半」と、
また道のりも正確だ。
当時の庶民の旅の広がりを示している。
                  山内種俊 著 『上州の旧街道いま・昔』より

 この説明を読まなければ、普段この前を通っていても、なにか歴史的な碑が建って
いるな程度にしか思わなかったことと思います。



もうひとつ面白い道標を次に。
国道353号線の赤城村溝呂木の交差点から前橋方向に向かい、
大きなカーブを経て左側を注意してみていくと、
下に紹介した道標塚の案内が出ています。
旧道の細い道をしばらくたどると五叉路の角にあります。

          
史跡をわかりやすく保存するために、一生懸命につくられたものでしょうが、
もう少し歴史風情も配慮したつくりにはできなかったものだろうか?


石に刻まれた文字はかすれたようになっていますが、この解説碑で確認できます。




こころしつかに たつねてそゆけ よつの方
むつのちまたに わかるれと


赤城村の歴史と文化については「赤城塾」という
長い活動歴をもつ研究グループがあります。
市町村合併のおかげで同じ渋川市の仲間にもなりました。
その赤城塾の活動拠点である「文弥」という
ユニークな寿司屋さんのサイトを紹介します。
http://www8.wind.ne.jp/bunya

,


参照おすすめブログ
お客さんが教えてくれた4頭立て馬頭観音
お散歩趣味
とてもセンスの良い写真に溢れたブログです。
かなりの量がありますが、飽きることなく一気に魅せるお気に入り!



                                  
    萩原進・丸山知良他 著         峰岸純夫 田中康雄 能登健 編
             『上州の諸街道』       『街道の日本史 16 両毛と上州街道』
              みやま文庫 (1971/04)            吉川弘文館(2002/03) 定価 本体2,300円+税




群馬県教育委員会が『群馬県歴史の道調査報告書』(群馬県内主要図書館にて閲覧可能)
というシリーズを出していますが、
その報告書と別に下の写真のパンフレットを発行しました。
詳しい地図のついたとても便利なものです。
(残念ながらこちらは、古書店などで運よくめぐりあえないとなかなか入手できないようです)

         

群馬県歴史の道シリーズ
1、群馬県の歴史の道   2、中山道  3、下仁田街道  4、信州街道  5、十石街道
6、三国街道  7、沼田街道  8、会津街道  9、清水峠往還  10、佐渡奉行街道
11、足尾銅山街道  12、日光例幣使街道  13、古河街道  14、古戸・桐生街道  15、日光への脇往還




『あかがね街道 −足尾銅山街道の面影ー』
檜谷俊樹 写真集
 2007年6月 定価 本体2,300円+税


  
 須田 茂 『群馬の峠』
みやま文庫 (2005/08) 会員配布





五十嵐富夫 『三国峠を越えた旅人たち』
吾妻書館(昭和58年05) 定価1,500円 絶版 





吉永哲郎 著 『峠 幻視行 上州の峠で見たもの』
上毛文庫(2000/05)(会員配布本)
 


 先に紹介した高桑信一などと同じような視点を、吉永哲郎さんももっており、上州の峠について本書で語ってくれています。峠については、いづれ
別ページを設けることになるかと思いますが、本書は古道を語るうえでも欠かせない一冊なので、ここに紹介します。

 峠行 はじめに代えて

 峠は風の通り道だといわれる。山を知る人は、峠付近ではテントを張らないという。遠くから山脈を眺めると、低いところがあるが、そこが大抵は
峠である。人間が時間をかけて、そこを通るのが、一番楽だと考えたからであろうか。
 こう考えると、峠は人間の知識の集積だともいえる。

 山を越えるという意識は、生きる空間の広がりが、そこに住む人間にとって必要になったからでさる。山を越えなければ生きていけないという、切
実なことがあったのである。
(中略)

 人は生まれ育ったところで、生涯生活できれば幸せであるとした時代は、確かに故郷は人生のよりどころであった。だから、故郷を離れることは
つらかった。そして、できることなら故郷に錦を飾って、故郷に帰りたいと思った。離れなくてはならない人の、悲しい言い分でもあった。
 故郷を離れた者は、精神のよりどころとして、いつまでも故郷は元の姿を止めて欲しいと思う。しかし、故郷は美しく感傷的な心を癒す、もとのま
まの空間ではいられない。大都市周辺で生活することが、より豊かと感じる状況は、人は生まれ故郷を出ることを余儀なくされる。
 多くの故郷は過疎地帯になった。それをどうすることもできない。全国いたるところに廃村がある。できれば、生まれ育ったところで生涯をおくれた
らと思う。しかし、現代はそれを許してくれない。

 峠に立つと、眼下に人の住まなくなった村や廃屋を多く目にする。そして、しばらくは峠を後にして下っていった人々の後ろ姿を思い浮かべる。

 元教員である吉永さんは、源氏物語などの地域学習で活躍されていますが、常に生活者の人間の姿を捉える視点を欠かさず、現代人の眼でど
うみるかといった語り口にとても共感をおぼえます。

 そのような視点だからこそだと思いますが、冒頭は「三国峠で見た二人の若者」の話として、池波正太郎の描く、若き会津白虎隊戦士の話から
はじまります。





 最後にふたたび、高桑信一著『古道巡礼』のなかの言葉を紹介します。

 「滅んでしまった径を復活させることの意義とはなんなのだろうと、ふたたび思う。たとえていえば、滅んでから長い歳
月を過ごした径は、復活に際して同じ歳月を必要とするのではあるまいか。その径が、必要とされた同じ用途と目的を
携えて復活するのではないからである。

 古道の復活は知的行為だが、そこには観光に走ることなく、小さな作為のままに維持をしつづけなくてはならないとい
う、明確な責任が伴う。郷愁に駆られての一時的な行為なら、それは単なる愚行に過ぎない。」








作成予定ページ
三国街道   日光例幣使街道  けもの道



追記

 古道や峠の問題に限定したことではありませんが、群馬の歴史を考えるうえで『神道集』の位置づけを強調している
識者が多いことに触れないわけにはいきません。
 ここで取り上げた吉永哲郎さんもそのひとりですが、群馬県立歴史博物館館長の黒田日出男さんも「群馬学」のシン
ポジウムのなかで触れられていました。
 月刊「上州路」に須田茂氏が連載されてた「群馬の峠を歩く」のなかでも『神道集』をもとにした興味深い記述がありま
す。





        



                                     文 ・ 星野 上


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