第五テーマ館 根源から「お金」を問う エンデの遺言
しばしば、地域通貨のことなどを話題にするとき、現代の貨幣経済の弊害面を話題にするあまり、現代の私たちの経
済生活そのものに対しても得てして否定的な見方になってしまいます。
しかし、いかにかに資本主義経済が末期症状に至ろうが、貨幣経済に人間性を蝕む弊害があろうが、今、私たちが
生活している環境は資本主義の貨幣経済にどっぷりつかっています。そればかりか、好むと好まざるにかかわらず、 貨幣経済の恩恵もはかりしれないほど誰もが受けています。地域通貨や未来社会を考える場合も、このことを忘れて しまうと良い結論は絶対に生まれてきません。
この日常不可欠な貨幣経済のことに対して、私たちは、あまりにも何も知らなすぎます。
だからといって難しい経済学を一生懸命勉強したところで、何の役にもたたないのは、最近の経済学者自身が認め
ています。
今、私たちが必要としているのは、もっと日々手にしているお金とどうつきあっていくか、ということです。
ちょっと横道から入っていきますが、上記の宮部みゆきの『火車』は、彼女の最高傑作で,
これを越える作品は未だにないという人もいます。またある人はこの本は、「ミステリーなのに、3回読んでも面白い」と
もいいます。しかし、ここでとりあげるのはこのミステリーの傑作度についてではなく、この作品の主題で取り上げている カード社会のことです。
この作品は消費者金融の問題が軸になってストーリーが展開していきます。それだけに、作者が消費者金融につい
て深い取材を重ねたあとがうかがえ、その核心部分が前半3分の1くらいのところに出てきます。
この本が出てからさらに十年ほどがたっていますが、未だに事態はいっこうに変わっていないように見えます。
最近、児童書でようやく「お金について考える」といったようなタイトルの本が出ていましたが、中をみたら、なんと金
融・証券についての解説本でした。
これだけ矛盾が社会いたるところに噴出している「お金」とのおつきあいの仕方について、私たちは何にも教わっては
いないのです。
さらに書店でよくベストセラーになる「お金」に関する本は、どちらかというと財テクでいかにお金を貯めるかといった内
容(アメリカのベストセラー翻訳ものに特に多い)のものばかりが目につきます。
その点、日本人の書いたものはまだ、財テクにはしるよりも、いかにしてゼロからお金や利益をあげていくか、努力の
仕方、汗の流し方、人脈に対する考えなどが具体的に出ています。
その典型的なのが次に紹介する斉藤一人さんです。
常に全国高額納税者番付にでている方ですが、斎藤氏によると節税に知恵を出すことなんて馬鹿げているという。
「斎藤さん、こうすればもっと節税できますよ」なんて言ってくれる人がいても、税務署の人が変われば解釈が違ってし まうようなことには一切つきあわないと断言しています。
斎藤さんは1円のお父さんは5円です,、という。
5円のお父さんは10円、
10円のお父さんは50円、
50円のお父さんは100円、
100円のお父さんは500円、
500円のお父さんは1,000円、
1,000円のお父さんは5,000円、
5,000円のお父さんは10,000円であるという。
人は誰でも自分の子供を大切にしてくれるひとには感謝してお礼をしたくなるもの。1円玉が道のコンクリートの隙間
に埋もれていたら助けてあげなさい。1円玉を大切にしてあげないといけません、という。
この説明の仕方が、一般の1円の積み重ねをおろそかにしてはいけませんよといった教訓話と斎藤さんの話の違い
で、1円を助けてあげた人には必ず1円のお父さんの5円がお礼をしにきます、という。10円玉を助けてあげた人には 10円玉のお父さんの50円玉が必ずお礼をしに来ます、という。
こうした数々の話をもとに、いかに自分がツイていると思えるかが大事であると話しをすすめていきます。そこには斎
藤一人さんみたいになる方法ではなく、それぞれがどうしたら最高の日々を生きられるかのアドバイスがたくさんつまっ ています。
不動産や財テクで儲けた人と違って、お金を増やすこと、利益を生むことはなにかを真剣につきつめることは、人間
の真の姿や本質に迫るものがあります。
お金をたくさん稼いだ人に対しても、偏見をもつことなく、もっとたくさんのことを学ぶことが必要です。
そして、次に大事なのが、お金のやりくりの仕方です。
確かに世の中はいつも平等社会とはいえないかもしれませんが、「お金さえあったら」という考え方をしている限り、お
金はまわってきません。
「お金さえあったら」「時間さえあったら」「能力さえあったら」という言葉ほど、自分の人生を台無しにする言葉はありま
せん。
お金のあるひと、貯まるひとというのは、家計なり、経営なりの収支にマイナスをきたさない術を知っています。
月収がたとえ15万になったとしても、そのなかでやりくりができる。
これでは足りないと考えるひとは、いつも足りなくなる宿命にあります。
また、その道のプロというのも、予算がいくらあったら出来るなどという発想はぜず、与えられた予算のなかで可能な
ことを考えることができて、そのうえで常に成果をあげることができるのがほんとうのプロです。
こうしたお金とのつきあい方に関して、古典ともいえるほどよく紹介される本が、ロバート・クロサキの『金持ち父さん貧
乏父さん』です。
かつて私は、アメリカ流の財テク金持ち入門書にはまったく興味を持てませんでしたが、本書は、自分の方の考え方も変わってきたためか、自立
した生き方、生涯を送るためとても示唆に富んだ本で、一時のベストセラーで終わることなく多くの人に読まれて続けることも頷けるおすすめ書で す。
近頃私がよく出会うのは、忙しすぎて自分の財産に注意を払うことを怠けている人たちだ。自分の健康に注意を払う
ことを忘れている人もいる。どちらの場合も理由は同じ−−−忙しいからだ。
こういう人たちがいつまでも忙しい状態を続けているのは、自分が真正面から立ち向かわなければならない問題を避
けるためにほかならない。
金持ち父さん貧乏父さんとは、実際にいたふたりのお父さんのことです。
一方の父親は「金への執着は悪の根源だ」と言い、もう一方の父は「金がないことこそが悪の根源だ」と言う。
この二つの選択は誰もがぶつかることのあるジレンマですが、一見片方のお金への執着を嫌っている人ですら、ちょ
っと仕事で成功したり、小銭が手に入ったりすると、簡単に万能の力をえたがごとく勘違いをしてしまう人も多い。逆もま たしかり。
「もし人生から教訓を学ぶことができれば、きみは成功する。もし学べなければ、人生につつきまわされるばかりだ。
人間には二種類ある。
一つは人生につつきまわされても、ただそのままにしておく人たち。もう一つは、怒ってつつき返す人だ。でも多くの人
は、つつき返すときに相手を間違える。
上司や仕事そのもの、あるいはだんなさんや奥さんに向かってつつき返すんだ。
みんな人生が自分をつついえいるとは知らないからなんだな」
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