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吉田芝渓の時代について
2004/11/03更新


  吉田芝渓の生きた18世紀後半の江戸時代は、それから幕末の動乱に至る100年あまりの歴史を見るうえでも、とても
興味深い転換点に位置する時期であると思えます。

 まず、第一に江戸期商品(貨幣)経済が発達し、商人の地位が上がってくる一方で、武士の地位が名目も保てなくな
るほど没落しはじめた時期であること。
 第二に、天明の浅間山の大噴火(関連ページ立松和平『浅間』)を契機にした大飢饉が起きたり、日本近海に異国船
の出没なども頻発しだし、社会不安が増大しはじめた最初の時期であること。
 第三に、それまでの教条化してきた官学である儒教、朱子学に対する反発が生まれはじめ、吉田芝渓などを含む折
衷学派(便宜上の表現)と呼ばれるような、一定のまとまりにはくくれない個人、なかには奇人ともいえるような個性的な
人々が各地で輩出しだした時期でもあります。

 さらに目を世界に広げれば、この時代はヨーロッパではフランス革命の起きた時代でもあります。



 私たちは歴史の転換点を、どうしても関ケ原の闘いや明治維新などを区切りにして見がちですが、現代という歴史の
転換点から考えると、天皇や貴族の地位が低下して武士階級が目覚しく台頭しだした後醍醐天皇の時代や、武士階級
の地位が低下して商人階級が台頭しだした井伊直弼や光格天皇の時代を、現代と共通した転換点と感じずにはいら
れません。

 そして、そのような時代には共通して、次の時代を代表するような集団やイデオロギーはまだ育たず、ポツリポツリと
異端と見られがちな個性的な個人が、社会や体制にたいして孤独な闘いをしているのを見ることができます。


 そうした例は、次に紹介する上杉鷹山(参照ページ上杉鷹山と折衷派の時代)や、高山彦九郎(参照ページ彦九郎山
)、高野長英(参照ページ長 英 逃 亡)、平賀源内、山片蟠桃、司馬江漢、二宮尊徳、さらには良寛さんなど、あげ
出したらきりがありません。

 かたや天皇の側でも、幕府の権威付けのお飾りで我慢してはいられないような光格天皇のような人が出てきたのも
必然のこととも思えます(関連ページ山伏と修験道 彦九郎山河



 まだ次の世の中がどのような社会になるのかは分からないが、その時代に噴出している矛盾と闘わずにはいられな
い人びとは共通して、それまでの社会観や理論にとらわれることなく、非常に実践的な視点を研ぎ澄ましています。
 ちょうど、高度経済成長期やバブルの時代の成功法則が、その時代の大きな波にのること、時代の主流組織に属す
ることこそが必須の条件であったのに対し、その前提が崩れた今では、組織や派閥に頼ることなく、ひとりでも闘える勇
気と力を持ったひとの実践的突破力こそ、価値を持ち出しているように。


 そんな時代の流れ(こじつけ?)でみると、吉田芝渓という存在も、さらには渋川郷学といわれる実学の系譜も、一地
方のみの流れではなく、新しい時代を作る側からは主流ともいえる
ひとつの流れにのったものであるとみることができないでしょうか。

 
 ついでに郷学というものを、渋川の地元贔屓に陥ることなくみるためにも、安岡正篤が郷学三先生として次の三人を
紹介していることをここに引用しておきます。

「(略)この二宮尊徳と併せて皆さんにお勧めしたいのは、千葉の大原幽学という人です。この人はことに農士道−郷学
の立場から深く注意すべきです。尊徳は豪傑型農士だが、幽学は哲人型の郷長老です。尊徳は権力的背景があり、
世の中に知られておりますが、幽学は知られておりません。不遇と悲劇に終わったが、藤樹・尊徳・幽学の三人は、郷
学三先生というべきでしょう。」                  安岡正篤『運命を創る』プレジデント社

  

高橋 敏 著 『大原幽学と幕末村落社会 改心楼始末記
岩波書店(20005/03) 定価 本体2,900円+税


                                         文 ・ 星野 上


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